今回大失敗だったのは、いつも持っていくガスコンロを他人に預けていたため、固形燃料の簡易バーナーを持参したことだった。
風があったので一向にお湯が沸いてくれない。だいぶ燃料を継ぎ足してようやくラーメンらしくなったが、実はこの燃料は某お客さんから「アウトドアでも使えるから使ってみて。もう廃版になった商品だけど。」と言われて持参してきたカーバイトとアンモニアの合成物でできているという代物。点火性が悪く、火力も弱い。いただいておきながら失礼ではあるが、緊急用燃料としては×がついたのも分かる気がする。
新大日茶屋の前の広場の脇には←こんな桜の木があって花はちょうど満開。
今年は川崎で花見をして、遅れて咲く八重桜の花見散歩をし、新潟に戻って妙高で桜を見て、そして今日丹沢で花見ができたから、ずいぶん花見三昧の春である。
12:20にここに着いて40分ほどご飯を食べて一服タバコを吸って、お茶を飲んでゆっくり過ごす。
見ての通りの晴天で午前中の薄曇はどこへやら。
多分、霞がもう少し晴れれば、富士が見えるはずであるが、まだ霞の中でその姿は見えなかった。
1時を回ったので新大日を出発。
木の叉小屋はささっと通過して塔ノ岳直下の急登にかかる。かなりきつそう、と思っていたら、地味に歩いていると1時間もしないうちに尊仏山荘の屋根が見えてきた。
なんとなくあっけない感じもしながら、とうとう塔ノ岳に到着。みんなと一緒に行動していると「良かったね〜、やっと着いたね〜おつかれ〜!」とかやっているんだろうけど、そこは独りで行っているちょっと寂しいところで、しみじみと歩いてきた尾根を振り返り、予想以上にくたびれている体に「お疲れさん!」と言ってあげるのみである。
塔ノ岳山頂はガイドブックに丹沢では一番たくさんの人が頂上に立つ場所と書いてあったが、本当にそのとおりだった。
連休後半の初日とあって日帰り、縦走、宿泊予定者など頂上広場に溢れている。
山頂でプロポを持っている人がいるので何をしてるんだろうかと思ったら、正体はこういうことだった。尾根から吹き上げる上昇気流を捕まえて、気持ちよくグライダーを飛ばすためにここまで機体とプロポを背負って上がってきたということなんだな。いろんな楽しみ方がある。頂上の人たちが時々「うぉーありゃいいなぁ。」とか言っている視線の先を追うとパラグライダーが山頂よりも更に高いところを円を描きながら飛んでいる。
隣にいたカップルの女の子が「あれで下に降りたいね、ラクチンかなぁ・・・」とか甘い声で彼氏に聞いている。彼氏は冷静に「ここまであの装備を担ぐ方が大変じゃないの?」と応えていた。
富士の方向を見ると雲の模様のような感じで富士山頂の一部が見え始めていた。
横浜市内なんかで見るサイズとはかなり違う。素直に感動した。でも、まだ霞がかなりあるのですっきりした美人の稜線の広がりを見ることはできない。
塔ノ岳で水の補給をしておかないと丹沢山以降で困るため、下り5分、上り15分という水場へペットボトルを片手に降りる。かなりの勾配を下ること約10分。
足の壊れ具合を痛感させられつつ、なんとか水場に到着。小屋のスタッフが水汲みに来ておられたが、1人は20Lポリタン2本を背負子に積み、もう1人は1本。2本積みの青年は何事もないようにのっしのっしと段を上っていく。
1本積みの年配の小屋番さんは後ろにもう1人取水用の蛇口付パイプのみを持った人と2人で「ひぇ〜うぉ〜、おっもたいわ、○×君は(2本背負って)平気で上がれるっちゃ化けモンだわ。俺にはきつい、これでもきつい。」と泣きが入った状態で山荘に戻っていかれた。
僕は単純に空身でペットボトル1本を持って上がるだけで、けっこう息が上がるのにそれでも20Lを背負って上がれる貴方もすごいと思う。
水の補給も完了して荷物の重さは元通り。ここまで来てしまえば丹沢山は目と鼻の先。
塔ノ岳から一旦下れば、地図で見る限りはそれほどの高低差もないようだし、気楽にスタート。あとは泊まって寝るだけという余裕がものすごく嬉しい。
日帰りだと目標のピークにたどり着いてからが結構焦るのである。毎度のことながら写真を撮りながら歩くのであまりに景色が良かったりすると全然ペースが上がらず、予定の倍くらいかかることが多いので、帰りに猛ダッシュとなり、翌日は筋肉痛でグッタリしているのがオチ。今回は「自分にご褒美」モードの山歩きとしておこう。
ところで、なぜか悩まされている膝痛。
けっこう痛みがあって下りは本当に恐る恐る足を出しているので、下りにかかるとペースがガクンと落ちる。
日常的にもけっこう歩いている方なのである程度自信はあったのだが、こういうトラブルに巻き込まれるのは生まれて初めてのこと。
気持ちが少しずつ暗くなってくる。明日は丹沢山から11km先の宮が瀬まで行く予定なのに、この状態が良くならないと絶対行けない。
まして痛みがひどくなっていたら今来ているルートを戻って塔ノ岳から大倉尾根を下る破目になるが、そこはとにかく下るのみのダラダラと長い尾根と聞いているので、膝に良くないことが予想される。いろいろと考えてみるが、初めて来たところだからコースの様子がわからないので、小屋に入ったらとにかく相談してみることにする。あれこれ思索することは止め!
日高、竜ヶ馬場を経由して、気持ちの良い尾根のトレールを歩く。風も吹き、気持ちの良い尾根道をのんびり歩くと気持ちがとても解放される。時々左を向くと富士が見えている。少しずつ霞が晴れて来ているような気がする。夕方の富士の姿に自ずと期待が高まる。
のんびり歩いて約1時間で丹沢山頂のみやま山荘に到着。今日の行程はここで終了。脳の内側で「ビール、それも冷たいの!しかも2本!!」と悪魔のような囁きが繰り返し、繰り返し・・・・・・・・だめだ!我慢できない。「すみません、ビール2本ください。」 |