十二曲りは文字通り段差も大きく、曲がりくねっておりゼイゼイ言いながら登る、とにかく登る。
50センチくらいは一度にヨイショと上がらなければならないところも無数にあるのでポールのお世話に随分なっている。
一気に20分でまず最初の登りをクリア。途中ですれ違った下山中のご夫婦に「あらあら、そんなに慌てないで。ゆっくりね、ゆっくり。」と声をかけられてしまう。悲壮な顔して登ってたんでしょうな。
十二曲りでしっかり休憩。水を飲んでレーズン食べて、タバコも一服つけて気合を入れなおして15分後に出発。息はすっかり収まったので「よっしゃ!」とばかり富士見台までの2度目の急坂に向かう。
(十二曲りは道標も曲がっている。ザックはばてて寝ている→)
息が収まったというのは気休めでがんがん高度が上がるものの、息も上がる。しんどい、という言葉と「よぉーく考えよう♪お金は大事だよぉ〜♪」という嫌な歌がなぜかBGMのようになって頭の中でグルグルと回っている。なんでここでこのメロディーが出てくる???
このしんどい場所も40分でなんとかクリア。富士見台を上がってしまえばあとは黒沢岳の山腹を巻くようにして等高線沿いで歩くだけだから楽チンであった。標高もだいぶ上がってきてシラビソやツガなどの樹が目立つようになってきた。周囲の草木の高さが低くなってきて笹が出てきたので少しずつ眺望が開けてくる。風は実に心地よい。
歩きながら増えてきた高山植物の写真を撮りながら歩く。快適な山歩きペースになってきた。(←富士見台分岐)
大きな葉に白い大きな花を冠に乗せているのはキヌガサソウ。見たまんまのネーミングである。緑の中に凛と咲いていて目を引く。大型の葉と花なので嫌が応にも目立つ。ところどころで群れて咲いているところもあり、圧巻である。
だいぶ下界で見ない花が顔を見せ始め、数分歩いては撮影をしているのでさっぱりペースが上がらない。
メディアの容量が絞られているので端から見たもの全部撮りたいのだが、そうもいかないので撮ってはモニターして良いものだけ一枚残して後は消去。そんなことしてるもんだからマップのコースタイムとどっこいどっこいの時間がかかる。
最初名前がわからなかったが、茎も葉も柔らかそうでおいしそうに見えたこの花→はサンカヨウと呼ぶらしい。高山植物のサイトでたまたまそっくりなのを見たので、多分合ってるんだろうと思う。
いつぞや少なくなりつつある山菜と言われて出してもらったことのあるウドナの茎に似ていたのでてっきりそれだと思っていたら、違うんだそうだ。下山後にエスペロの専務さんに聞いて判った。その場で食べなくて良かった。やはり慌ててがっついてはいかんのである。
時々強い風が吹いて、濃い霧が目の前を通過していく。
火打山の頂上はまったく見えずで、今日は諦めた方が良さそうだ。天気も去ることながらすでに正午を回っているので上であんまりのんびりできそうにもない。スタートするのが遅かったから仕方ないと諦めるよう自分に言い聞かせる。
一瞬だけ前ページのトップの写真のように火打山の山稜が見え隠れした。しかし、後にも先にもそれっきり。まだくっきりと残雪が残っている様が見えた。頂上はガスと風でずいぶん寒そうだ。
高谷池ヒュッテが見え始め、頭の中ではBGMが切り替わりドラマ愛し君へのテーマ曲に変わる。直太郎がずっと歌っている。セリフは「早くメシ、早くメシ。」というものだったが。
高谷池ヒュッテに着くと風雅な尺八の音色が聞こえてくる。演歌を吹いておられた。ヒュッテの管理人さんなんだろうか、白髪を短く刈り込んだ方がいらっしゃったので挨拶をする。
今日は天候が今ひとつしゃんとしないので景色は望めないね、と言われる。今後のコースを聞かれたので天狗の庭まで行ったら下山する旨を告げる。昼食をヒュッテ前の休憩テーブルで自炊させてもらっても良いかどうか聞くと「今日なんか誰もいないから、気にせずごゆっくり!」と言われたので、用意してきた塩ラーメンとレトルトご飯とシーチキンを取り出す。メニューは塩ラーメンとシーチキン雑炊。
最近、マイナーでさっぱり人気のないキャンピングガスのコンロで湯を沸かし、まずコーヒーを入れる。コーヒーを飲みながらラーメンを作り、食べ終わったらかなり身体が元気になってきた気がした。これだけだとお腹が空くのでレトルトのご飯をラーメンスープに放り込み、シーチキンを加えて煮込み、食器一杯の雑炊ができる。ここまで食べるともう満腹である。
しかし、米どころ新潟まで戻ってきていて食べた米は東急ストアで売っていた「あきたこまち」のレトルトパック。どうして家にあったコシヒカリご飯を持って来なかったんだろう。お馬鹿である。
小屋の方にハクサンコザクラの花の咲き具合を尋ねてみる。
例年よりはだいぶ雪解けが早かった所為で開花も早かったということ。高谷池が臨める裏手に案内してもらうと一部にピンク色のハクサンコザクラの小さな群生と遠くに名残の水芭蕉が見える。
エスペロの専務さんから教えてもらったとおり、天狗の庭まで行った方が大きな群生に出会えそうなので、食事の片づけをして高谷池を後にする。
約20分で天狗の庭に着く予定。この間、視界がなくなるということはなかったが、どっしりと見えるはずの火打山頂上方向はまったく何も見えなくなってしまった。気温も低い。
この写真は天狗の庭方向に数分歩いたところにある高谷池を一望できるポイントである。
絵に描いたような三角屋根の高谷池ヒュッテがガスの向こうにかすんで見える。
ここから眺める限りではハクサンコザクラの群落はほとんど見当たらない。
食事の休憩時間に小さな群生を見たのは、写真中央のあたりである。この写真ではほとんど判らない。
それにしても今日眺めているこの景色は日常離れしている。時間をかけて歩いてきて、やっと出会える景色である。霧が出たり、晴れたり、風の具合で景色が変わる。霧が目の前を薄く覆うと色がなくなってモノクロームの景色になるし、そのスクリーンがさっと吹き飛ばされると新緑が際立って見えてくる。
足元によく注意しながら歩いているとたくさんの目立たない植物がきれいな花をつけている。
やっぱり、2000mくらいまで登ってくるとしんどいこともあるけど、良い事もあるな。 |